東京の大型アリーナ。十数組が入れ替わり立つ複数アーティストのライブを、リアル観客と全世界配信の両方で成立させる。設営から本番、撤収まで——アストバーンが現場でどこまで作り込むのかを、1本の架空案件で通してお見せします。“ワンストップ”を、言葉ではなく図面と香盤で。
出演者が多いほど、転換とリハの設計が勝負になります。現場の熱量を殺さず、配信の画と音も全曲分そろえる。最も難度の高い形のひとつです。
十数組が入れ替わると、サウンドチェックと場当たりが渋滞します。前日までに全組のリハ枠を分単位で組み、当日は香盤通りに流すだけの状態にします。
1曲でも音や画が崩れれば、その曲のアーカイブは一生残ります。カメラ12系統・配信冗長化・全曲のカメラ割りを事前に設計します。
LED・照明・特効を吊れば吊るほど、トラスの耐荷重と受電容量が効いてきます。「吊れる前提」で演出を組んで現地で吊れない、を絶対に起こさない。
メインステージ+花道+センターステージのアリーナ構成。トラスの吊り点(モーター位置・耐荷重)、カメラ位置、見切れライン、車椅子・グループボックス席まで1枚に落とし込みます。
吊り点(モーター)にかかる重さは、灯体だけではありません。トラスそのものの自重・ケーブル・金物まで、すべて足して初めて「吊り荷重」です。
| 項目 | 内訳 | 重量(例) |
|---|---|---|
| トラス自重 | アルミ角トラス 約8m+ジョイント金物 | 約 80kg |
| 照明機材 | ムービング・LEDパー・ピンスポット | 約 240kg |
| 映像(LED) | LEDパネル+フレーム+電源 | 約 280kg |
| ケーブル | 電源・DMX・映像(垂れ下がり分込み) | 約 70kg |
| 金物・付属 | クランプ・セーフティ・シャックル | 約 40kg |
| 静荷重 小計 | =この1スパンを吊るのに必要な重量 | 約 710kg |
モーター定格は 0.5t/1t/2t が基本。選定は 安全率5:1(WLL=破断荷重÷5)が原則で、定格いっぱいでは吊りません。4t必要なスパンは2t×2点に分散し、さらに各点に余裕を残します。巻き上げ時の加速で生じる動的荷重も、静荷重に上乗せして見ます。
重量に入れ忘れがちなのが、トラス自重・ケーブル・金物。特にケーブルは長く垂らすほど効いてきます。灯体だけ数えて発注すると、当日に計算外の重さがかかってモーターが巻き上がらない。吊り込みは演出より先に、すべての重量を足してから確定します。
見切れライン(スタンド端の客から機材裏が見える線)を引かない会場図は、SNS時代には致命傷です。裏側が映り込んだ1枚が拡散したら、演出の価値が一瞬で崩れます。
「電源を引けば動く」ではありません。全機材の消費電力を積算し、力率で割って必要容量(kVA)を出し、余裕と漏電対策まで設計します。図ではなく、数字で答えます。
容量はkW(実際に使う電力)だけで決めてはいけません。LED・調光機器は力率が下がりやすく、kVA(見かけ電力)で見ないと容量が足りなくなります。
| 系統 | 主な機材 | 想定負荷 |
|---|---|---|
| 照明 | ムービング ×60/LEDパー ×120/ピンスポット ×4 | 約 45kW |
| 音響 | L/Rメイン+サブ+ディレイ塔+アンプ群+モニター ×12 | 約 20kW |
| 映像・配信 | LEDビジョン/カメラ ×12/スイッチャー・配信機材(UPS経由) | 約 25kW |
| 合計(実電力 kW) | — 各機材の定格消費電力を積算 | 約 90kW |
| 力率0.8で換算 | kVA = kW ÷ 力率(0.8) | 約 113kVA |
| 余裕率25%込み 必要容量 | 突入電流・追加機材・電圧降下の保険 | 約 140kVA |
受電は 三相200V/400A(≒138kVA)クラスを基準に、不足分は仮設発電機を別系統で増設(発電機は kVA×0.8=kW)。照明・音響・配信は必ず別系統に分け、配信系は無停電電源(UPS)で守ります。
仮設電源で本当に怖いのは、容量不足より感電です。接地(アース)が取れない機材には、高感度・高速形の漏電遮断器(感度電流30mA・動作0.1秒以内)を必ず入れる。LEDの高調波や突入電流も見落としがちで、kWだけで容量を決めると本番中にブレーカーが落ちます。
「何アンペア引けますか」の前に、「全機材で何kVA使いますか」。ここを積算できない会社に、大型現場の電源は任せられません。容量計算と漏電対策は、演出より先に決める土台です。
この規模は設営から退館まで5日。各セクション(音響・照明・映像・配信・特効・バンド・運営…)が同じ時間軸で何をしているかを1枚に。リハ系(青)・ゲネプロ(橙)・本番(紺)を分けて管理します。
| 日 | 時刻 | 全体フェーズ | 音響 | 照明 | 映像・配信 | 特効 | バンド・出演 | 運営 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Day1 | 08:00 | 設営開始(搬入・吊り込み) | スピーカー吊り込み | トラス組み・吊り上げ | LEDビジョン建て込み | 機材搬入 | — | 搬入動線・車輌管理 |
| 終日 | 設営継続(夜間も) | ケーブル敷設 | 灯体取付・回路結線 | カメラ位置出し | 仕込み | バックライン搬入 | 楽屋・受付設営 | |
| Day2 | 〜12:00 | 設営完了・単体チェック | 卓〜アンプ結線 | 調光・全灯チェック | UPS結線・回線敷設 | 火薬量確認 | 機材セット完了 | 動線最終確認 |
| PM | テクニカルリハ | 系統・ノイズ確認 | キュー作り込み | カメラ割り・配信テスト | 特効単体リハ | バックライン確認 | 客導線リハ | |
| Day3 | 終日 | アーティストリハ | 各組サウンドチェック | 各組SS合わせ | 各組カメラ割り | 演目別 特効合わせ | 全組パートRH・場当たり | 楽屋・ケータリング |
| Day4 | AM | ゲネプロ(本番通し) | 本番同条件 | キュー通し | 本番画で通し | 特効通し | 全組通し | 開場・客導線リハ |
| 17:00 | 開場 | 客電・BGM | 客電100% | 配信スタンバイ | 待機 | 楽屋待機 | 入場・誘導 | |
| 18:00 | 本番(210分・全世界配信) | 香盤通りQ出し | キュー実行 | 12カメ・配信中 | キューで発火 | 転換・出ハケ | 客席安全管理 | |
| 21:30〜 | 終演・客出し → 撤去開始 | 仕込み逆順で撤去 | トラス下ろし | アーカイブ切替・機材照合 | 残火確認・返却 | 退場・積込 | 退場誘導・原状回復撮影 | |
| Day5 | 〜09:00 | 完全退館 | 積込完了 | 積込完了 | 積込完了 | — | — | 最終確認・鍵返却 |
このマトリクスの価値は「他セクションが今何をしているか」が一目で分かること。音響がチェック中に特効が火薬を装填していたら危険。横の列を揃えるだけで、事故は激減します。
本番210分を分刻みで。転換・MC・映像・休憩まで秒単位で設計し、全セクションが同じ台本を持ちます。(演目・出演はすべて架空の記号です)
転換(暗転中に物が動く時間)を独立の行にしていない進行表は、必ず押します。十数組の出ハケと機材転換を甘く見ると、後半が雪崩のように遅れ、配信の尺もアンコールも削られます。転換こそ分単位で守る。
上のモデルケースは大規模ライブですが、考え方はどの現場でも同じ。目的から逆算し、技術の現実まで踏み込んで設計します。(以下はいずれも分野のイメージで、特定の団体・施設を指すものではありません)
なお実際の案件は、守秘義務によりWeb上では公開していません。お打ち合わせの場では、近しい事例をお話しできます。
多カメラのライブ配信、映像演出、大規模イベント。現場とネットの二重最適化、回線・電源の冗長化まで含めた技術設計が強みです。
試合日のスタジアム集客、ファンエンゲージメント、グッズ・物販導線。「また来たくなる」体験を、回遊と滞在の設計から組みます。
テーマ施設・観光地のインバウンド集客と体験設計。文化の翻訳を踏まえ、海外客に“伝わる”導線と演出をコンサルティングします。
このサンプルは架空案件です。あなたの実際の現場に立って、同じ精度の図面と香盤を引くのが私たちの仕事です。「この予算で何ができる?」の一言から、その場で叩き台をお出しします。提案まで費用はかかりません。
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